- 高次脳機能障害とは?
- 理学療法と高次脳の関係性
- 高次脳の大まかなとらえ方
- 注意機能
- 注意機能の構成要素
- 覚度
- 集中性(選択性)
- 配分性
- 持続性
- まとめ
・高次脳機能障害とは?
高次脳機能とは、人間以外の動物には見られない、あるいは動物より顕著に見られる高次な知的機能を指す。人よりも早く走る動物や深く潜る動物は多いけれど、買い物や料理が出来るのは人間だけである。買い物や料理は、人間が自分の持っている身体機能を状況に応じて適切に利用するために知的機能を使っている。この知的機能に含まれる、認知・記憶・情報の選択・判断・学習・行為・創造の総称を高次脳機能と呼ぶ。
・理学療法と高次脳の関係性
前回の投稿でも話したが、理学療法は基本動作の評価や治療を良く行う。基本動作は、普段は無意識に行っているが脳卒中や骨折などの疾患により身体機能が変化すると無意識に行っていた基本動作が困難となる。
そのため、現在の身体機能に応じた動作獲得の戦略を再構築する必要が出てくる。
再構築には①現在の身体機能の認識②状況判断③動作プログラムの修正④末梢への指令が必要となる。以上4つの施行を行うのに必要なのが高次脳機能である。典型的な高次脳機能障害を呈していない場合でも高次脳機能的な観点から理学療法を行う事は、患者のより良い反応を引き出すために必要であるといえる。
実際に立ち上がり動作を例にしても、どの相で上手く実施出来ていないのか(体幹の前傾が出来ていないのか?離殿時に臀部を浮かせることが出来ないのか?)を評価し、それがどの身体機能が低下しているのか(下肢の筋力か?体幹の筋力か?可動域の問題か?)を評価しとしていくのと同様に高次脳も評価を進めていくのが大切である。
・高次脳機能の大まかなとらえ方
理学療法と高次脳機能についての関りを説明したので次に大まかな脳の機能を説明したい。
脳の機能は、知・情・意の3つに分類して考えると高次脳機能の理解が容易となる。知は、認知機能を指す。頭頂葉・後頭葉・側頭葉が関与しており、体性感覚や特殊感覚などの知覚領域が存在し各野で知覚された情報を記憶と統合し空間や物体などの認知が行われる。情は、喜怒哀楽のような何かを感じて動く心の働きを指す。辺縁系が司っており、大脳皮質の機能である高次脳機能には含まれないが高次脳機能との関りが深い。意は、意思決定や行動実行の機能を指す。前頭葉が司っている。
以上の機能を合わせて考えると、ある情報が「知」で処理され、「意」に伝えられて行動が起こる。しかしこの行動は「情」によって変化する。先ほどと同様に起立動作で例えると、セラピストからの起立指示や尿意による起立意欲が沸き起立を試みる。その際には、現在の状態(どの程度の高さの椅子に座っているのかや支持物があるか、自身の身体機能でこの椅子から立てるかなど)を「知」によって情報を集める。その後、実際に立ち上がる為に体幹や下肢に筋発揮を指示する「意」が働く。しかしこの際に、情動の起伏(疲れて立ちたくない・自分は立てるわけがない)により立ち上がりが出来る場合と出来ない場合が生じる。このように一つの動作において数瞬の間に脳にて様々な情報交換と統合が行われていることが分かる。
・注意機能
ここからは、高次脳機能の基盤である、注意障害を中心に考えを述べていきたい。
注意機能とはある身体的な活動を行う際に、1つないし複数の対象に能動的あるいは受動的に行われる心的な活動をさす。例えば起立動作練習の際に、周囲の環境へ注意が向いてしまいセラピストの指示が入らない場合には筋力が保たれていたも立ち上がる事は出来ません。このことからも患者の意識的な動作を促す際には、注意機能がどの程度保たれているかを先に確認しておく必要性があります。
また、注意機能は限られた処理資源を使用しているとういう事も覚えておきたい。たとえば、運転免許を取得したばかりのころは運転に集中し助手席の人と話す余裕はないが、運転に慣れてくると世間話をしながらでも運転が可能になる。つまり、動作に対し経験の積み重ねによって無意識化に行える(慣れ)ようになるとその動作に対する注意資源が減少し他の事へ注意資源を使用できるようになる。
・注意機能の構成要素
注意機能の構成要素の分類として、多くの考え方が報告されているがLevittらの機能分類を紹介したい。
この機能分類は、注意機能を①覚度②集中性(選択性)③配分性④持続性に分けて考えている。
・覚度
刺激に対する感受性や反応性とその持続性の事。
(例えば、車の運転中に突発的なアクシデントに気付き(感受性)ブレーキを踏んだり、ハンドルを切る(反応性)といった反応が出来るか否か。)
覚醒度は外的な反応、覚度は心的な反応であるため覚醒した状態にてどの程度の反応が引き出せるかで評価する。
・集中性(選択性)
特定の刺激にのみ集中させる能力であり集中性(選択性)が低下すると、他の刺激に反応してしまう。
・配分性
同時に複数の事に注意を払う能力である。同時に2つや3つの事に注意を向けるる事になるが、課題の難易度が上がるほどに分配性は低下しやすい
・持続性
刺激に向けた注意を維持する能力。この能力が低下すると動作中の注意が散漫になったり・動作停止してしまうことがある。
まとめ
今回は、高次脳機能障害の大まかな把握方法と注意機能の大まかな考え方についてしらべました。これからも、論文や文献から有益な情報を探していき身体機能以外にも着目出来る理学療法士を目指していきます。
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